スポーツや肉体労働などで膝の靭帯に負荷が蓄積すると少しずつその線維は損傷します。オーバートレーニングになると、この損傷スピードと修復されるスピードのバランスが悪くなり、病態は徐々に悪化し、炎症が生じます。病態が悪化すればするほど、復帰までに必要な安静期間が増えます。したがって、損傷をいかに早く発見して、早期対処することが大切です。エコーやMRIで精密に評価して、早期発見に努めましょう。
主に体質によって、骨の形や筋肉の走行に異常があり、膝蓋骨を制動する靭帯にも異常があると膝蓋骨は容易に脱臼します。
膝蓋骨になんらかの剪断力がかかると膝蓋骨を制動する靭帯が断裂して膝蓋骨は脱臼します。そのとき骨片が生じることもあります。
膝蓋骨脱臼を放置すると、次第に軟骨は摩耗し、変形性膝関節症という不可逆な病態に移行します。早めの対処が必要です。
初期治療は、安静とお薬とリハビリです。「炎症をしずめつつ、痛みをとるお薬」を内服・外用しながら、リハビリの先生の指導をうけると痛みが早く緩和します。リハビリの先生は、痛みの再燃や病態の進行を防ぐための指導もしてくれます。強い痛みの場合や痛みを早くとりたい場合は、膝関節に炎症をしずめる薬を注射します。当院では、注射をするときは超音波エコーを用いて、ターゲット部位に正確に打ちますので、安全性が高く、速やかな効果が期待できます。MRIをすることで、断裂部位の形状やサイズ、関節の中の状態を精密に把握できます。精密検査をして正しい診断をつけましょう。正しい診断と治療によって、痛みは早く軽快し、長期的な好成績を生むことができます。
膝蓋靭帯炎をはじめ、多くのスポーツ障害の背景にはオーバートレーニングがあります。練習量が多すぎて、組織の修復スピードがそれに追いつけない場合に問題が生じます。修復のための安静期間が足りていないと徐々に組織は壊れていきます。しかし、早期に障害を発見し、適切な安静期間をとり、その間に再発防止の指導が適切になされれば、「超回復」という現象が生じて、これまで以上に競技パフォーマンスがあがります。当クリニックではここをめざします。ただ、漫然とこれまでの練習をつづけてしまうとやがて病態は慢性化し、長期間のパフォーマンス低下に苦しみます。靭帯が断裂してしまうと競技復帰までかなりの期間を要するため、活躍への道が絶たれてしまいます。こうなる前に、適切な安静期間をとりながら、適切な指導を受けましょう。
消炎鎮痛剤はいろいろな種類があり、強さも副作用も異なります。上図は、その一例を示したものです。図の右に行けばいくほど、炎症をしずめる効果は高くなりますが、長期に連用すると副作用が生じる確率が増えます。逆に図の左に行けばいくほど、副作用のリスクは減りますが、効果の即効性は低くなります。適切な時期に適切な薬剤を使うことで、効果は高まり副作用を減らすことができます。そのあたりを診察で適切に指導させていただきます。