肩関節拘縮

肩関節の最内部は関節包という袋に覆われています。正常の関節包はとても薄くて柔らかい組織で、あらゆる方向にしなやかに伸び縮みします。一方、肩関節周囲炎が慢性化して肩関節を動かさないと、関節包はどんどん厚く硬い組織に変わり、肩の可動域はさまざまな方向に制限されます。「炎症」⇒「痛み」⇒「不動」⇒「関節包が固くなる」⇒「固くなると炎症が生じやすくなる」⇒「痛み」⇒「不動」⇒「固くなる」・・・・

と悪循環に陥りやすい疾患です。早期に炎症と痛みを取り除き、適度にリハビリを介入する必要があります。

初期治療は、お薬とリハビリです。「炎症をしずめつつ、痛みをとるお薬」を内服・外用しながら、リハビリの先生の指導をうけると痛みが早く緩和します。リハビリの先生は、痛みの再燃や拘縮の進行を防ぐための指導もしてくれます。強い痛みの場合や痛みを早くとりたい場合は、肩関節内に炎症をしずめる薬を注射します。当院では、注射をするときは超音波エコーを用いて、ターゲット部位に正確に打ちますので、安全性が高く、速やかな効果が期待できます。MRIをすることで、関節包の厚みや関節の中の状態を精密に把握できます。精密検査をして正しい診断をつけましょう。正しい診断と治療によって、痛みは早く軽快し、長期的な好成績を生むことができます。

消炎鎮痛剤はいろいろな種類があり、強さも副作用も異なります。上図は、その一例を示したものです。図の右に行けばいくほど、炎症をしずめる効果は高くなりますが、長期に連用すると副作用が生じる確率が増えます。逆に図の左に行けばいくほど、副作用のリスクは減りますが、効果の即効性は低くなります。適切な時期に適切な薬剤を使うことで、効果は高まり副作用を減らすことができます。そのあたりを診察で適切に指導させていただきます。

初期治療をしても、なかなか良くならない場合、根治術を考慮する必要があります。薬を飲んでも痛みがとれない、夜間時痛が強い、リハビリしても一向に可動域がよくならない方には適応になります。根治術は2つの方法があります。一つ目はクリニックの外来レベルで行うサイレントマニピュレーションです。それでもよくならない場合は、2つ目の入院して行う関節鏡視下手術になります。

サイレントマニピュレーションはクリニックの外来で行えます。超音波エコーを用いて、針先を正確にコントロールして、腕一本だけ麻酔します。15分位すると完全に無痛状態になりますので、その後ストレッチを行っていきます。患者さんに痛みを感じさせることなく、可動域を回復させることができます。痛みや可動域制限で長く困っている方は、ご相談ください。